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「抹茶不足」は二つある
一つは増産で解ける。もう一つは増産では解けない。量産できる半分は10年で約3.2倍になった。増やしようのない半分は、茶園の面積と季節と認証に固定されている。二つの不足を混ぜることが、このブームで最も多い誤読だ。
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世界は何を奪い合っているのか
2025年は輸出量が43%増え、単価が38%上がった——倍増の半分は量、半分は価格だ。粉末状が輸出額の84%を占め、米国1か国で金額の41%を持っていく。
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供給は眠っていない
碾茶生産量は10年で約3.2倍。最大の産地は宇治ではなく鹿児島だ。機械化と産地の移動が、総量の側を押し上げている。
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本当に高いのは別の抹茶
同じ「碾茶」でも、頂点は平均の5倍、煎茶の25倍だ。一年に一度だけ、被覆をして、手で摘む——高さの理由は希少性の演出ではなく、生産能力の物理的な上限にある。
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なぜ池は広がらないのか
−23%
茶栽培面積の10年の変化
約4年
茶樹の植付から初摘みまで
63%
対米欧輸出で有機の枠を通る割合
高価格の池に入れる茶園は、碾茶の総量が示すよりずっと少ない。
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次に見るもの
2027年の一番茶の競りを見る。宇治の手摘み碾茶の価格が2024年の水準まで下がり、同時に取引量が増えれば、高価格の池は広がるということであり、この記事は間違いになる。それまでは、価格より先に量を見る。
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「抹茶不足」は二つある。規模化できる粉末茶は、生産量が10年で3倍になり、需要に追いつきつつある。本当に不足しているのは被覆一番茶の小さな池だ——茶園面積と収穫の季節と有機認証に三重に固定され、価格がどれだけ上がっても広がらない。
2025年の日本の緑茶輸出額は721億円と1年で倍増し、粉末状が額の84%を占めた。だが碾茶の生産量は10年で約3.2倍に増えている——規模化できる半分は不足していない。本当に足りないのは被覆一番茶だ。宇治の手摘み碾茶は1kg 43,330円まで上がり、日本の茶栽培面積は10年で23%減った。
要点
- 2025年の緑茶輸出は721億円と1年で倍増した。量は43%増、単価は38%上昇——ブームの半分は実需、半分は値上がりだ。
- 粉末状(抹茶と粉末煎茶などを含む口径)が輸出額の84%を占め、米国が金額の41%を占める最大の買い手だ。
- 碾茶生産量は10年で約3.2倍になり、最大の産地は宇治ではなく鹿児島——抹茶の総量は不足していない。
- 本当に不足しているのは被覆一番茶だ。宇治・手摘み碾茶は1kg 43,330円で、碾茶全国平均の5倍、煎茶の25倍。
- 茶栽培面積は10年で23%減り、新植の茶樹は初摘みまで約4年、対米欧輸出の約63%が有機認証枠——高価格の池の拡大は構造的に固定されている。
「抹茶不足」は二つある。規模化できる粉末茶は、生産量が10年で3倍になり、需要に追いつきつつある。本当に不足しているのは被覆一番茶の小さな池だ——茶園面積と収穫の季節と有機認証に三重に固定され、価格がどれだけ上がっても広がらない。
まず区別する:これは二つの市場だ
食品グレードの粉末——抹茶ラテ、アイスクリーム、製菓・飲料に使う粉末茶。鹿児島を中心に、機械摘みや二番茶も使え、工場と産地転換で増やせる。2025年の緑茶輸出単価(粉末状)は平均1kg 6,927円。
儀式グレードの碾茶——茶道の点前に使う最上級の抹茶原料。宇治などの被覆一番茶で、手摘み、石臼挽き。2025年の宇治・手摘み碾茶は1kg 43,330円。こちらの制約は工場ではなく、茶園そのものにある。
一つは工場で解く問題、もう一つは茶園で解く問題だ。以下の数字は、この二つの市場に属している。

共識:世界が抹茶を奪い合っている——ここまでは正しい
先に口径を断っておく。貿易統計に「抹茶」という分類はない。以下は財務省貿易統計の「緑茶」(HS 0902)で、そのうち「粉末状」が抹茶に最も近い口径だが、粉末煎茶なども含み、純粋な抹茶ではない。
この図が示すこと:輸出額は6年で約5倍、2025年だけで倍増した。量も価格も上がっている。
事実
農林水産省『茶をめぐる情勢』(令和8年10月)が財務省貿易統計を集計:2025年の緑茶輸出は721億円、12,612トン。粉末状は8,718トンで量の69%、額の84%。米国が最大の仕向地で額の41%を占め、米国向けの85%が粉末状だ。2026年1–8月の輸出も674億円と前年同期を上回る。
需要は本物で、お金も本物だ。ここからが、共識の落とした部分である。
しかし供給は眠っていない:碾茶は10年で3倍になった
この図が示すこと:総量だけ見れば「日本は抹茶を作れない」は誤りだ。碾茶生産量は10年で約3.2倍になり、2025年は全国の荒茶生産量の8.6%を占める。
事実
全国茶生産団体連合会の調べ(農林水産省が掲載):碾茶生産量は2024年に5,336トン、2025年に約6,278トンで、2014年の約3.2倍。産地は鹿児島が1位、次いで京都、静岡。国も転換を補助する。碾茶への転換用被覆資材に10a当たり10万円、改植に同15.2万円。
伸びの出どころは、機械化された産地と用途の転換だ。煎茶園を碾茶園に変え、二番茶を食品加工用の碾茶にする。総量の側では、価格シグナルは効いている。

本当に不足しているのは、別の抹茶だ
この図が示すこと:同じ「茶」でも価格は25倍違う。「抹茶の価格」は存在しない。飲料原料から儀式用品までの長い勾配があって、不足はその頂点でだけ起きている。
頂点が広がらない理由は物理的なものが三つある。第一に季節。最上級の碾茶は一番茶だけで、摘採前に約2–3週間の被覆が要り、棚を架けた茶園はその季節、その一作に固定される。第二に手。宇治の手摘み碾茶は人の手に依存し、2025年の一番茶価格は前年の216%だった。第三に時間。茶樹は植えてから初摘みまで約4年、安定生産には7–10年かかる。2026年の一番茶は、鹿児島で前年の約2倍、静岡で約70%上昇と伝えられ、上昇は止まっていない(農林水産省の集計)。
事実
京都府茶業会議所の関係機関が2025年6月に公表した報告(全農京都茶市場のデータ):宇治・手摘み碾茶の2025年一番茶は1kg 43,330円で、2024年(20,024円)の216%。農林水産省によれば碾茶の2025年全期平均は1kg 8,562円、一番茶は10,030円、煎茶の平均は1,746円。
なぜ池は広がらないのか:面積、時間、認証
見方
私たちの読み:高価格の池の制約は需要側ではなく、供給のストックにある。日本の茶栽培面積(主産県)は2014年の39,200haから2023年の30,100haへ、10年で23%減った。荒茶生産の首位は2024年に鹿児島へ移り(44%)、それを支えるのは機械化された平地の茶園であって、宇治のような手と斜面の産地ではない。
同時に、輸出の高価格の池には認証の門がある。2025年に米国とEU・英国へ出た緑茶の約63%は有機同等性の枠を通った——池に入れるのは認証を受けた茶園だけだ。面積は縮み、新しい畑は時間を要し、認証には門がある。この三つが重なれば、価格がどれだけ跳ねても頂点の池は大きくならない。
農林水産省自身も懸念を書いている。2025年4月の基本方針は、生産が減り続ければ国内と輸出の需要を合わせた量を賄えなくなる可能性を示し、見通しでは国内需要が2023年の71,000トンから2030年に63,000トンへ減り、総需要は輸出の伸びでかろうじて保たれる。もう一つの防御は名前だ。2026年7月10日、「日本茶/Japanese Tea」が地理的表示(GI)に登録された。農林水産省は背景の一つに、中国産の「宇治抹茶」が海外で流通していることを挙げている。量を広げられないとき、まず名前を守る。

最も強い反証:これは単なるバブルではないのか
真剣に扱うべき反論はこうだ。抹茶熱が冷めれば価格は勝手に戻り、「構造的な不足」はバブルの言い訳にすぎない。粉末の半分については同意する。食品グレードの新規供給は進んでおり(碾茶総量の10年3倍がその証拠だ)、熱が引けばそちらの価格は先に緩む。だが儀式グレードの池の制約は需要側の気分ではなく、茶園の面積と季節と認証というストックだ。需要の冷却は「もう上がらない」ことはあっても、「増える」ことにはならない。検証方法も書いておく。2027年の一番茶の競りで、宇治・手摘み碾茶の価格が大きく下がり、同時に取引量が増えれば、高価格の池は広がり得るということであり、この記事の判断は誤りになる。
結論:足りないのは「抹茶」ではない
主題に戻る。世界に足りないのは抹茶という品目ではない——その品目の生産量は10年で3倍になり、輸出額は1年で倍増した。足りないのは、面積と季節と認証に固定された被覆一番茶の小さな池であり、それは偶然にも、海外の消費者が「抹茶」という名前で思い浮かべるものそのものだ。来年見るべきは三つ。2027年の一番茶の競りの価格と量、2026年産の碾茶生産量の公表、そして2030年810億円という輸出目標の進み具合。価格より先に量を見る——量の変化こそが、不足の真偽を決める。
出典・参考資料
- 農林水産省『茶をめぐる情勢』令和8年10月(輸出額・量・単価、粉末構成、仕向地、有機比率、碾茶の生産量と価格、栽培面積、基本方針と補助、GI登録)
- 農林水産省『2025年農林水産物・食品の輸出額』(緑茶輸出額の前年比の裏付け)
- 京都府茶業会議所の関係機関『緊急報告 令和7年京都府産新茶の状況について』2025-06-11(全農京都茶市場:宇治・手摘み碾茶43,330円/kg)
- 農林水産省『作物統計』令和5年産茶(栽培面積39,200ha→30,100ha)
- 農林水産省『令和7年産茶の摘採面積、生葉収穫量及び荒茶生産量』(荒茶68,000トン、鹿児島44%)
- 国土交通省・観光庁 多言語解説データベース(茶樹の植付から初摘みまで約4年、安定生産まで約7–10年)
- 鹿児島税関『令和7年度 特集』(米国向け輸出の税関口径データ)
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