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米中がAIの未来を争うなか、日本は何を失いつつあるのか

米国はモデルとプラットフォームと設計を、中国は規模と導入と追い上げの速さを、日本は先端チップが必ず通る上流工程を握っている。しかし「欠かせない供給者」は「次のルールを決める者」とは違う。同じ物差しで三国を測り、日本の強みが今も地位を買えるのかを検証する。

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米中がAIの未来を争うなか、日本は何を失いつつあるのか

59

米国の重要AIモデル(2025年)

35

中国の重要AIモデル(2025年)

0

日本の重要AIモデル(2025年)

工場では、中国が世界の新しいロボットの約59%を導入し、日本の導入は19%減った。企業では、日本の27.0%がAIに組織的な取り組みをしていない——この調査は日・米・独・中の4か国を聞いたもので、日本が最も高い。

暫定的な発見を一文で言えば、日本の伝統的な強みは残っているが、強みと影響力は切り離されつつある。それを3つの問いで検証する——誰が技術を決めるのか、誰が稼ぐのか、誰が自律できるのか。

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世界の競争:順位表ではなく、欠けているものの地図

行は3つの問いに対応する:上の2行が技術、3行目が自律、下の2行が稼ぐ力。年次は各行の冒頭に記した。

何を見るか米国中国日本
モデルとプラットフォーム · 202559、基盤は自前35、独自に完結0、基盤は借り物
先端チップ · 2025設計とEDAで首位7nm級、EUVなし自国生産はゼロ
重要な装置・材料 · 2025メーカーは2位・3位最大の買い手、代替が加速6工程で首位
産業への導入 · 20252位(38,500台)1位(354,000台)3位(36,219台)
事業化 · 2026年初の調査全社展開35.6%全社展開40.9%組織的取り組みなし27.0%

三国の外にはTSMC(ファウンドリ69.9%)、SKハイニックス(HBMの過半)、ASML(EUVの唯一の供給者)がいる。彼らを入れると欠けているものが際立つ。ルールを決めるものは、モデル、プラットフォーム、設計に集まっており、日本に欠けているのはまさにその3つだ。

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日本が今も握っているもの:上流の6工程

日本メーカーの世界シェア(%)
50%EUVマスク検査100%ABF膜95%超EUVレジスト約9割(推定)コータ・デベロッパ86.6%半導体テスト約65%シリコンウエハ約53%(推定)

破線は50%——過半が「握っている」の条件。2025年の数字。項目ごとの出典と証拠の強さは本文に。

産業基盤も加わる。日本は世界のロボットの38%を作り、稼働ストックは約45万台(2024年末)。

ただしこのページの本当の問いはシェアではない。生産の要所を握ることは、次の世代のルールを決めることと同じか。

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圧力は増している。しかも加速している

35

中国の重要AIモデル数(2024年15 → 2025年35)

35%

中国の装置自給率(2024年25% → 2025年35%)

−19%

日本のロボット新規導入(2025)、順位は3位へ

中国メーカーは自国の新規ロボット導入の55%を占めるようになり、米中の首位モデル同士の性能差は2.7%まで縮んだ。静的に見れば日本のシェアは大半がまだ保たれている。しかし変化の方向は、どれも日本と逆を向いている。

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3つの未来、どれが来るのか

A · 高価値の供給者——上流は保たれ、稼ぎも続く。しかしルールは他国が決める。何もしなければ漂着する先だ。

B · フィジカルAIのニッチな主场——工場と介護の現場に自前の生態系を育てる。上限は最も高いが、中国のコストと米国のプラットフォームと同時に戦うことになる。

C · 相対的地位の低下が続く——上流が一工程ずつ侵食され、応用は海外への依存を深める。まだ現実ではないが、信号は最も密だ。

各シナリオの根拠と、それを覆す条件は、本文に日付と数字で列挙した。確率の数字は作らない。

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まだ答えのない問い

本誌の暫定判断は一文に収まる。日本は持ち札をすべて失ったわけではない。しかし製造業の強さは、もはや次世代の地位と自動的には等しくない——日本はルールを決める者より、高価値の供給者になる可能性のほうが高い。これは検証待ちの判断であり、それを修正しうる2027–28年の4つの日付は、本文の判断の節に列挙した。

中核の矛盾を読者に残す。世界が日本の材料と装置とロボットにますます依存する一方で、それらをどう使うかのルールが他国で書かれていくとき——「欠かせない」ことは、影響力と呼べるだろうか。

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日本はAI競争の持ち札をすべて失ったわけではない。上流工程と産業の現場は、まだ日本の手にある。しかし、誰が技術を決め、誰が稼ぎ、誰が自律できるかという3点で、証拠は同じ方向を指している。日本はルールを決める側から、高価値の供給者へと退きつつある。これは衰退が確定したという主張ではない。「製造業の強さは次世代へ自動的に引き継がれる」という前提が、データによって否定されたという主張だ。

2025年の重要AIモデルは米59・中35・日0。ロボット新規導入は中国が約59%、日本は19%減で3位に後退。誰が技術を決め、誰が稼ぎ、誰が自律できるかという3つの問いで、日本の上流の重要性が次世代の地位を維持するのに足りるかを検証する。

要点

  1. 衰退を2種類に分ける。本稿の対象は相対的衰退——日本も成長はするが、米中がより速く進み、日本の位置が受動的に薄まっていく過程だ(導入部で展開する)。
  2. 技術リーダーシップ:2025年の重要モデルは米59・中35・日0(Epoch分類。0は「モデルを作っていない」ではなく「世界のフロンティア層に入っていない」という意味)。米中の性能差は2.7%まで縮み、その追い上げに日本は参加していない。
  3. 日本の上流の重要性は本物だ。不可欠な6工程で首位、ロボット生産は世界最大。しかし重要性と交渉力は切り離されつつある。日本の装置大手5社の対中売上は初めて減少し、過去のシェアの高さは将来の価格決定力を証明しない。
  4. 圧力は動的だ。中国の装置自給率は1年で10ポイント上昇、自国ロボット市場の55%は自国メーカー、日本の国内導入は2025年に19%減って3位。静的なシェアは保たれても、傾斜は日本に味方していない。
  5. 3つの問いのうち、稼ぐ力が最も弱い。企業のAI利用の広がりは低くない(調査サンプル内で86.4%)が、全社展開は21.5%にとどまり、組織的取り組みのない企業が27.0%で4か国最高。AIを使うことと、AIで稼ぐことは違う。
  6. 暫定判断は悲観寄りだが、反証可能だ。2027–28年に日本のモデルがフロンティア層に入る、関門のリストが広がる、国の有償調達とフィジカルAIのクラスタが予定通り実現する——そうした証拠が出れば、本誌は悲観を下方修正する。指標は判断の節に列挙した。

日本はAI競争の持ち札をすべて失ったわけではない。上流工程と産業の現場は、まだ日本の手にある。しかし、誰が技術を決め、誰が稼ぎ、誰が自律できるかという3点で、証拠は同じ方向を指している。日本はルールを決める側から、高価値の供給者へと退きつつある。これは衰退が確定したという主張ではない。「製造業の強さは次世代へ自動的に引き継がれる」という前提が、データによって否定されたという主張だ。

ルールを決める者(米国)

フロンティアモデル、エージェントのプラットフォームとクラウド(Microsoft、OpenAI、Anthropic、Google)、チップ設計とEDAのすべてを保持。進路とインターフェースを決め、プラットフォームの賃料を取る。弱点は製造——先端の生産能力はTSMCにあり、ロボットのハードウェアは輸入に頼る。

規模で追う者(中国)

重要モデルは1年で倍以上に増え性能も迫り、最大の装置市場、世界最大のロボット導入を持つ。規模を速度に変え、導入をデータに変える。弱点は先端製造——EUVがなく、最も先端の量産は7nm級にとどまり、チップはなお輸入への依存が大きい。

高価値の供給者(日本)

上流の不可欠な6工程、世界最大のロボット生産、精密製造の厚い蓄積。どの世代の技術も通らざるを得ないものを売る。弱点はルールからの距離——フロンティアモデルはなく、プラットフォームは借り物、先端の生産能力はゼロ。

チェーン上の他の要所

TSMC(ファウンドリ69.9%)、三星とSKハイニックス(HBMの担い手)、ASML(EUVの唯一の供給者)。三国物語の外側で、彼らが「先端チップ」の現実の境界を決めている。どの国の地位も、この地図の上で読まなければならない。

問いをはっきりさせてから、日本に何が残っているかを見る。

2025年、米国は重要なAIモデルを59、中国は35、日本は0発表した。ここでいう「重要」はEpoch AIの選別基準(第2節参照)だ。同年の工場では、中国の産業用ロボット導入が世界の約59%を占め、日本は前年比19%減で、何十年も守ってきた世界2位の市場の座を明け渡した。企業の側では、調査対象の日本企業の27.0%がAIに組織的な取り組みを一切しておらず、4か国の中で桁違いの異常値だった(全量の数字は各節と付録に)。

米国と中国が固めつつある優位を前に、日本は次の産業競争でなお重要な地位を占められるのか。半導体材料、装置、製造業の強さは、それに足りるのか。

ここで言う衰退は、産業全体が縮む話ではない(装置メーカーは今も成長し、ロボット生産は世界最大を保つ)。本稿が扱うのは相対的衰退だ。日本も前進はするが、米中が成長、技術の定義権、価値の獲得でより大きく前進するため、日本の位置は受動的に下がっていく。「日本は終わった」と「日本はまだ強い」の双方の語りが共有する誤りは、この2つを混同することにある。

一、「AIの競争的地位」とは何か

モデル数や投資額だけでは、一国に地位があるかどうかは判断できない。本稿は3つの問い——誰が技術を決め、誰が稼ぎ、誰が自律できるか——を、三国すべてに当てる。

問い何を見るか米国中国日本
技術リーダーシップ中核技術を開発し、進路・インターフェース・標準を決めるのは誰かモデル、プラットフォーム、設計、EDAのすべてを保持モデルが迫り、生態系は独自に完結上流工程は強いが、進路は他国が決める
価値獲得新たな利益の主たる部分を取り、価格決定権と顧客関係を持つのは誰かプラットフォームとクラウドの賃料規模ある導入と自国市場装置と材料を売り、最終顧客から最も遠い
戦略的自律自律的に導入を進められるか、外部への依存が深いのは誰かTSMCの能力とASMLに依存先端のチップと装置の輸入に依存外国のモデル、プラットフォーム、GPUに依存

本稿の問いは一文に圧縮できる。伝統的な半導体上流では今も重要な日本——その重要性は、AI時代の技術リーダーシップ、経済的価値、戦略的自律へと変換できるのか。以下の第2節から第5節が証拠、第6節が3つの未来、第7節が本誌の判断だ。

二、フロンティアの差は広がりうる

まず「0」を正確に読む。 Stanford AI Index 2026が数えた2025年の重要(notable)モデルは、米59・中35・韓8・日0。2024年は米40・中15・日はやはり0だった。Epoch AIの「重要」は顕著性による選別で、画期的な成果、広い引用や利用が基準になる。限界もある。公開された成果に偏り、企業内部のモデルや非英語圏の生態系は拾いにくい。したがって「0」の正確な意味は、日本のモデルが世界のフロンティア層に入らなかったことであって、日本がモデルを開発していないということではない。GENIACはモデルを生み、デジタル庁が選んだ国産7モデルのうち4つはゼロから学習され、楽天は671BパラメータのAI 3.0を発表した。どれも存在する。ただ、どれもこの層にはいない。2017–2025年の累計で日本のnotableモデルは6、韓国は23だ。

差のもう一方の側では、米中が互いに迫っている。 米中の首位モデル同士の性能差は、Arenaリーダーボードの尺度で2026年3月に2.7%まで縮小した。2025年2月にはDeepSeek-R1が一時首位に並び、その後も首位は入れ替わっている。フロンティアは2者の競争になり、2番手が加速している——中国の重要モデルは1年で15から35に増えた。

なぜこの差は自己強化されうるのか。 フロンティアモデルには flywheel がある。資本(2025年の民間AI投資は米2,859億ドル・中124億ドル・日11.1億ドル)が計算資源を買い、計算資源がモデルを生み、モデルがプラットフォームになり、プラットフォームが賃料を取って次の資本を賄う。中国には国家資本という第2のエンジンもある(政府引導基金が2000–2023年にAI企業へ累計約1,840億ドルを投じたと推計され、2025年には600.6億元の国家AI産業投資基金が新設された)。日本はこの flywheel のどの環にもいない。ソフトバンクの646億ドルはOpenAIの株式を買ったのであって、日本の flywheel を作ったのではない。

反例は特許だ。 日本の研究産出はゼロではない。WIPOの統計では、2014–2023年の生成AI特許ファミリーで日本は3,409件、世界4位(中国38,210、米国6,276、韓国4,155)。ただし特許ファミリーは出願量を測る物差しであり、中国の数の優位もそのまま能力の優位とは読めず、米国の特許は前方引用の影響力で勝る。この反例が証明できるのは日本の研究体制が今も回っていることだけで、特許とフロンティアモデルの間には資本、計算資源、製品化という3つの門がある。

この問いの核心:一国が長期に外国のモデルへ依存するとき、重要な技術路線への影響力に何が残るのか。 現在の証拠では、進路もインターフェースもオープンソースの生態系も、モデルを作る場所に蓄積していく。

三、日本が今も握っているもの:上流の6工程

悲観の前に、日本の強みを最も厳しい基準で棚卸しする。選定基準は本誌が定めた3つだ。工程が選ばれるには、①先端AIチップ(EUVロジック+HBM+先端パッケージ)の製造に不可欠であること、②世界首位が日本企業で、日本勢の合計シェアが過半であること、③先端ラインで量産採用された代替がまだ存在しないこと、の3つを同時に満たす必要がある。通過するのはちょうど6つ、装置と材料の2群に分かれる。

装置——3工程

工程日本企業シェア(出典・年次)代替の進捗
コータ・デベロッパ東京エレクトロン86.6%(2025、The Information Network)芯源微(北方華創傘下)は前工程装置の「突破」を2026–27年の目標とし、先端ラインへの量産導入はまだない
EUVマスク検査レーザーテック100%(アクティニック検査、世界唯一の商業供給者)中国メーカーの製品も顧客も見えない
半導体テストアドバンテスト約65%(テスタ全体、会社推計、2025)長川・華峰の2025年テスタ収入は約+55%・+46%

材料——3工程

工程日本企業シェア(出典・年次)代替の進捗
EUVレジストJSR、東京応化、信越化学、富士フイルム約9割(EUVについては、業界推定。レジスト全体では約5割)中国製EUVレジストの量産は報じられていない
シリコンウエハ信越化学、SUMCO合計約53%(業界推定)中国の300mmウエハは量産出荷(主に成熟ノード)
ABF膜味の素95%超(会社説明)第2の供給元は投資段階にとどまる

同じ基準で落選したものが、日本の境界を示す。エッチング(東京エレクトロンは3位で約15%、市場調査推定)、成膜(アプライド・マテリアルズが首位)、露光装置(ArF液浸でASMLが97%、ニコンは約3%。2024年)、洗浄(SCREENが各细分で首位だが、中国製の代替は量産され、自給率は約50%とされる)。産業基盤も実在する。世界のロボット生産の38%(IFR)、稼働ストック約450,530台で世界2位(2024年末)。

このリストは本物だ。ただし、それが何を測っているかに注意してほしい。これが示すのは、シェアが過半で、今のところ代替がないということだ。誰が主導権を持つかまでは示していない。 6工程のうち支配力の色彩を持つのは、国家系のJICに約9,000億円で非公開化された(2024年)JSRだけで、残りは商業上のシェアにすぎない。シェアは技術世代が替われば無効になりうる。支配力こそが、無効になるとき誰に発言権があるかを決める。

重要性と交渉力が切り離されつつある証拠は、このリストの最大の顧客のところにすでに現れている。日本の半導体装置大手5社(東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREEN、ディスコ、国際電気)の対中売上は、2025年度に合計約1.47兆円で、前年比およそ1割減——記録のある限り初めての減少となった。SCREENの対中売上は純売上高の38%(前年度42%)、東京エレクトロンの対中収入比率はFY2024の44%から約3割へ下がった。つまり、日本の最も代替しにくい製品は、代替の速度が最も速い顧客に売られている。その顧客が国産化に成功するほど、このリストの賃料は薄くなる。過去のシェアの高さが将来の交渉力を証明したことはない——1988年、日本は世界の半導体市場の約半分を持っていた。その後の30年は周知の通りだ。

ウエハの必経路:コーティング、検査、テストは同じ層にある。
ウエハの必経路:コーティング、検査、テストは同じ層にある。

四、圧力:4つの動的な線

第1の線——中国の代替。 中国の装置自給率(CSIA集計)は2024年の25%から2025年の35%へ跳ねた。北方華創の2025年の売上は393.5億元(+30.9%)、中微は123.8億元(+36.6%)。同時に境界も言わなければならない。最も深い所はまだ破られていない。先端光刻の自給率は「ゼロに近い」と定性的にしか言えず(TrendForce)、中芯の最も先端の量産ノードは7nm級(TechInsightsの分解で確認)でEUVは使えず、中国のICはなお大幅な輸入超過(2025年の輸入は約4,240億ドル、輸出は約2,019億ドル)だ。代替もその速度も本物だが、最も深い所にはまだ届いていない。

第2の線——中国の導入。日本の産業の強みが正面から試される線だ。 IFR World Robotics 2026(2026年9月公表)の2025年データ:

産業用ロボットの新規導入(台、2025年)
  1. 中国354,000(約59%)
  2. 米国約38,500
  3. 日本36,219(−19%)
  4. 韓国30,000

IFR World Robotics 2026。世界の年間導入は60万台を超え、稼働ストックは500万台に達した。

総量より重要な細部が3つある。第1に、日本は2位から落ちた。米国が約38,500台(+12%)で日本を上回り、IFRの日本への判断は「需要は小幅な伸びが見込まれるが、短中期に大きな回復は見込みにくい」だ。第2に、中国メーカーは2025年に自国市場で195,000台を導入し、シェアは55%(2024年は57%、IFR集計)——世界最大の市場で、地元メーカーがすでに主たる供給者になっている。第3に、このデータには冷却が必要だ。導入台数は需要と導入速度の指標であり、フィジカルAIの能力そのものの直接の指標ではない。多く入れることが、そのまま賢いロボットを意味しない。ただし、訓練の場がどこにでき、応用の生態系が誰の周りに育つかは決める。

では、日本のロボットメーカーの競争力は本当に損なわれているのか。供給の端はまだ否定されていない。日本メーカーは世界のロボット生産の38%を今も占め(2024年、IFR)、ファナックや安川電機の競争力を1年の国内導入で断罪はできない。中国市場の端では圧力は最も具体的だ。ファナックは中国の産業用ロボットで首位を失い(日経)、中国は世界の需要の約59%が集まる場所だ。結論:先に打撃を受けるのは需要と中国市場のシェアで、製造能力そのものは否定されていない——しかし方向は一様に下向きだ。 フィジカルAIの新しい一巡でも構図は繰り返す。2025年のヒューマノイド出荷は、宇樹が5,500台超(目論見書で開示)、智元が5,168台(Omdia推計)。米国のTesla Optimusは数百台にとどまり、年央に設計変更のため生産を止めた。日本には引用できる出荷系列がない。「量」がまず現れたのは、また中国だった。

第3の線——米国のプラットフォーム。 米国の優位は工場ではなく生態系にある。モデル(59)、プラットフォーム(クラウドとエージェントのインターフェース)、設計(チップ設計収入のシェア46%、2021年、SIA/BCG)、EDA(SynopsysとCadenceで61%、2024年)が噛み合っている。日本企業がAIを導入するとき、みずほのエージェント実証はClaudeのSDKの上で動き、デジタル庁の災害対応アプリの土台はClaudeとAmazon Novaだ。導入が1層深まるごとに、プラットフォームの賃料が1層増える。この線に「追い上げ」の物語は要らない。すでに完成した構造だ。

第4の線——日本自身の折旧。 関門メーカーの研究開発の原資は、中国市場という同じ金だ(前節)。半導体の技術者不足は約4万人(JEITA)。国内ロボット市場はIFRに中期的な回復は見込みにくいと判断されている。圧力のすべてが外部から来るわけではない。元手そのものが目減りしている。

五、AIを使うことと、AIで稼ぐことは違う

稼ぐ力では、日本が3国で最も弱い。証拠は総務省『情報通信白書2026』の4か国同一設問調査(2026年1–2月。日本企業477社、米・独・中は各308社、自己申告——以下の数字はサンプル内の割合で、各国の全企業の姿ではない)。

指標(生成AI)中国米国日本
少なくとも1つの業務で利用98.1%90.9%86.4%
全社横断で推進40.9%35.6%21.5%
組織的な取り組みが一切ない2.6%1.4%27.0%

広がりでは日本は大きく遅れていない(上の表)。差は深さに出る。4分の1を超える企業が「使っているが、組織的な取り組みは一切ない」——この27.0%は4か国の中で桁違いの異常値だ(ドイツは4.9%)。別の国内調査(帝国データバンク、2026年3月、有効回答10,312社)は設計が異なり直接比較はできない:生成AIを活用している企業は34.5%、サービス業47.8%に対し建設業は26.4%——普及は業種と企業規模で大きくばらつく。

世界的に見ても「使ったが稼げていない」は日本だけの話ではない。McKinseyの2025年調査(世界の1,993組織)では88%がAIを使う一方、EBITへの影響を報告したのは39%で、その大半は5%未満と答えた。違いは、他国がプラットフォームとモデルで稼ぎながら転換が遅いのに対し、日本はまず他人のプラットフォームへ賃料を払うところから始まる点にある。そして境界もはっきりしている。「組織的取り組みなし27%」から生産性や経済の損失額は計算できない——AIに帰属する生産性統計は、どこの国の統計機関もまだ公表していない。

導入の土台は、同じ硬貨の裏側だ。デジタル庁が選んだ国産7モデルのうち、ゼロから学習したのは4つ、海外の土台に基づくのは2つ(1つはMetaのLlama、1つはカナダのCohereとの共同開発)、未公開が1つ。法則は「モデルが大きいほど土台を借りる」だ。楽天AI 3.0(671B)の公開設定ファイルは、自身の構造をDeepSeek-V3と同系統と記している(コミュニティの分析で、会社は確認していない)。国は調達で需要を作り(デジタル庁は2027年4月から有償利用)、44社が出資するNoetraは2028年6月に27,500基のGPUクラスタの稼働を目標にする。需要と現場は日本のものだが、GPUとプラットフォームは日本のものではない。

フィジカルな世界は日本の導入層の主场:工場、病院、コンビニ。
フィジカルな世界は日本の導入層の主场:工場、病院、コンビニ。

六、3つの未来、どれが来るのか

シナリオA:高価値の供給者(何もしなければ漂着する先)。 上流の6工程はおおむね保たれ、装置と材料は堅調な収益と利益を生み続ける。しかしモデル、プラットフォーム、標準、最終顧客との関係は他国にあり、日本は技術の議題設定のたびに不在だ。

  • そう言う根拠:6工程の現時点の代替不可能性と、装置・ロボットメーカーの現存する収益力(棚卸しは前節)。
  • 最大の障害:代替の速さ(中国の自給率は年+10ポイント)とボトルネックの世代交替——このリストは前の世代のボトルネックの産物だ。
  • 見るべきサイン:2028年末に同じ基準で棚卸しし、6工程がすべて残っているか。日本の装置メーカーの対中売上が下げ止まるか。
  • これが出たら覆る:いずれかの工程で中国メーカーが中国以外の先端ラインへ量産供給を始める(AはCへ悪化する)。あるいは日本メーカーが先端パッケージやHBM関連など新しいボトルネックで首位を取る(Aは格上げされる)。

シナリオB:フィジカルAIのニッチな主场。 ロボットのストック、現場データ、介護をはじめとする硬い需要、社会の受容度(AIによる診断支援への支持72.4%、介護ロボットへの支持73.7%。厚生労働省調査)を土台に、産業と介護の領域で競争力のある応用生態系を育て、導入の借り手からニッチな主场の担い手へ移る。

  • そう言う根拠:ストックと生産シェア、国の調達とNoetra、社会の受容度(第4・5節)。
  • 最大の障害:土台はなお借り物(GPU、基盤モデル)。ロボットのハードウェアとコストでの中国の速さ(ヒューマノイド出荷はすでに規模を持つ)。縮む国内導入市場。
  • 見るべきサイン:2027年4月の有償調達が予定通り、縮小なく実現するか。2028年6月にNoetraのクラスタが稼働するか。日本のロボット導入が下げ止まるか。
  • これが出たら覆る:調達が見送られる、クラスタが遅れる、中国メーカーが日本国内のフィジカルAIの現場で象徴的なシェアを取る——いずれかが出れば、Bは標語に格下げされる。

シナリオC:相対的地位の低下が続く。 上流が一工程ずつ侵食され、応用の生態系は海外のプラットフォームとモデルへの依存を深め、日本は3つの問いすべてで後退する。産業は残り、収入も残るが、「欠かせない」が一項目ずつ期限切れになっていく。

  • そう言う根拠:4つの動的な線が同じ方向を向いていること(第4・5節)。
  • シナリオCにとっての壁:日本の蓄積の厚さと、国家の意思の実証——JSRの托管と10兆円の枠組みは、東京が真剣に防衛していることを示す。中国の代替は最も深い所(光刻、EUV材料)にはまだ届いていない。
  • 見るべきサイン:6工程のいずれかで日本勢の合計が50%を割る。中国の新設先端工場への導入で国産コータ・デベロッパが25%を超える(CSIA/TrendForce集計)。日本のnotableモデルがゼロのままで米中の差が保たれる。
  • これが出たら覆る:日本のモデルがフロンティア層に入る、Rapidusが量産し名のある大口顧客を取る、関門のリストが新しいボトルネックで広がる——いずれかが出れば、Cの傾斜の前提は再推計が要る。

3つのシナリオに確率の数字は作らない。言えるのは、Aは証拠が最も厚く、Bは上限が最も高く、Cは方向の信号が最も密だ、ということだけだ。

七、判断:まだ答えのない問い

4つの検証を束ねると、ひとつの暫定判断に行き着く——技術ではフロンティアに不在、稼ぐ力では価格決定権から最も遠く、自律では上流は自国に、土台は他国にある:

日本はAI競争の持ち札をすべて失ったわけではない。しかし、かつての製造業の強さが次世代の地位を保証するわけでもない。米中に比べ、日本が高価値の供給者にとどまり、中核のルール作りから遠ざかるリスクは、真剣に受け止めるべきだ。

これは予言ではない。この判断を変えうる証拠は具体的だ。2027年4月の有償調達、2027年度下半期のRapidusの量産、2028年6月のNoetraクラスタ、2028年末の関門リストの棚卸し——4つのうち2つが想定を超えて実現すれば、本誌は悲観を下方修正する。すべてが同時に外れれば、「高価値の供給者」というシナリオA自体を書き直さなければならない。事実が先、判断は事実を待つ。

最後に、ここまで読んだあなたへ問いを残す。

日本は、世界が欠かせない材料と装置とロボットを作り続けられるかもしれない。しかしモデル、プラットフォーム、次の産業ルールがますます他の国に決められていくとき、「欠かせない供給者」は「影響力を持つ競争者」と同じだろうか。

これからの10年、日本はAI時代の価値を生む側にいるのか。それとも、価値がどう分配されるかを決める力を、静かに失っていくのか。

付録:三国の主要データ総表

分野指標米国中国日本出典・年次
技術リーダーシップ重要AIモデル数59350Epoch分類、2025(AI Index 2026)
技術リーダーシップ生成AI特許ファミリー6,27638,2103,409(4位)WIPO、2014–2023累計
技術リーダーシップチップ設計収入シェア46%——SIA/BCG、2021
価値獲得民間AI投資2,859億ドル124億ドル11.1億ドルQuid集計、2025(AI Index 2026)
価値獲得半導体装置市場(買い手)北米109億ドル493億ドル(1位)95億ドルSEMI、2025年実績
半導体製造ファウンドリシェア—(TSMC 69.9%)中芯5.3%(3位)自国生産0TrendForce、2025
上流工程代替できない6工程の首位装置2位・3位自給率35%6工程すべてで首位本誌基準の棚卸し、2025
産業への導入 · 2025ロボット新規導入約38,500354,000(約59%)36,219(−19%、3位)IFR WR2026、2025
産業への導入 · 2025ロボット稼働ストック393,7002,027,190450,530(2位)IFR WR2025、2024年末
産業への導入 · 2025ロボット生産シェアハードウェアは大半を輸入自国メーカーが自国導入の55%(2025)38%(世界1位)IFR、2024–2025
事業化 · 2026年初の調査企業の全社AI展開35.6%40.9%21.5%総務省4か国調査、2026-01–02
事業化 · 2026年初の調査組織的取り組みなし1.4%2.6%27.0%同上
戦略的自律先端の生産能力の所有TSMCに依存EUVなし外国の能力とGPUに依存定性、2025–2026
4つの層:議題は失われ、計算はゼロ、関門はなお料金を取り、導入の窓は残り時間を示す。
4つの層:議題は失われ、計算はゼロ、関門はなお料金を取り、導入の窓は残り時間を示す。

出典・参考資料

  1. Stanford Institute for Human-Centered AI, AI Index 2026(重要モデル数2025:米59 / 中35 / 韓8;Arena首位同士の性能差2.7%、2026-03;2025年民間AI投資、Quid集計)とAI Index 2025(2024年のモデル数とベンチマーク差)https://aiindex.stanford.edu/report/
  2. WIPO, Patent Landscape Report: Generative AI(2024-07):特許ファミリー 中38,210 / 米6,276 / 韓4,155 / 日3,409(2014–2023、発明者の所在地別)https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2024/article_0009.html
  3. OECD, AI Papers No.47(2025):AI研究開発投資の実験的推計(2023:米898億ユーロ / 日105億ユーロ);ソフトバンクグループ(2026-10-01:OpenAIへの累計投資646億ドル)https://group.softbank/en/news/press/20261001
  4. SEMI, WWSEMS(2026-04公表):2025年の世界装置売上高1,351億ドル、中国493億ドル、台湾315億ドル、韓国258億ドル、北米109億ドル、日本95億ドル https://www.semi.org/en/SEMI-Reports-Global-Semiconductor-Equipment-Billings-Reached-135-Billion-in-2025
  5. TrendForce(2025年ファウンドリシェア:TSMC 69.9% / サムスン 7.2% / 中芯 5.3%;2024年EDA:Synopsys 31% / Cadence 30% / Siemens EDA 13%);SIA/BCG(米国のチップ設計収入シェア46%、2021);TechInsights(中芯7nm級N+2の分解分析)
  6. The Information Network(コータ・デベロッパ86.6%、2025);レーザーテック(EUVマスク・アクティニック検査の唯一の供給者);味の素(ABFシェア「95%以上」);SCREENグループ資料(洗浄の细分シェアと中国の純売上高比率38%、FY2026/03);日本の装置大手5社の対中売上約1.47兆円、初の減少(日経、TrendForce経由)
  7. CSIAの中国装置自給率(TrendForce 2026-01集計:25%→35%);北方華創、中微公司の2025年年報(売上393.5億元 / 123.8億元);芯源微の業績説明会(2026-10);中国海関総署(IC貿易2025:輸入約4,240億ドル、輸出約2,019億ドル。SCMP/CEIC経由)
  8. International Federation of Robotics, World Robotics 2026発表資料(2026-09-24):2025年導入台数 中国354,000(約59%)、米国約38,500、日本36,219(−19%、3位)、韓国30,000;中国メーカーの自国導入シェア55%(195,000台);世界ストック500万台 https://ifr.org/ifr-press-releases/news/five-million-robots-now-operate-in-factories-globally ;ストックと密度はWorld Robotics 2025(2024年データ:日本のストック450,530台、密度446台/万人;日本のロボット生産は世界の38%)
  9. 総務省『情報通信白書2026』(令和8年版)4か国比較調査(2026年1–2月;日本企業n=477、米独中は各n=308):生成AIの利用率、全社横断の推進、組織的取り組みなし、個人の利用率 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/eng/WP2026_overview.pdf
  10. 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月、有効回答10,312社):生成AI活用企業34.5%、業種別ではサービス業47.8%から建設業26.4%(出典9とは定義・標本が異なり、直接比較できない)
  11. McKinsey, The State of AI 2025(2025-11、n=1,993):88%の組織がAIを利用;EBITへの影響を報告したのは39%(大半は5%未満)
  12. デジタル庁(Gennaiの大規模試用と国産モデル選定、2026-03-06)https://www.digital.go.jp/news/10d55c63-b3e1-42b9-9cc5-93a06943ae0e ;NEC(Noetra発足、2026-07-16)https://www.nec.com/en/press/202607/global_20260716_01.html ;厚生労働省(介護人材の需給推計とAIへの態度調査、2026)
  13. 時事通信など(2026-10-15):日米投資枠組み第3弾(GlobalFoundriesのニューヨーク2工場、日本の出資上限210億ドル);経済産業省(Rapidusへの累計支援2.354兆円、2026-04;JICによるJSRの非公開化、2024);Omdia(2025年ヒューマノイド出荷推計:智元5,168台);宇樹科技の目論見書(2025年のヒューマノイド出荷5,500台超)
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