特集テクノロジー

この2nmプロジェクトは、半導体を作らない

LSTCが主導する医療AIプロジェクトがNEDOに採択された。ステージゲート前の予算は60億円超。買うのは実測データで書かれた要求仕様と2029年3月の審査であり、チップそのものは事業の範囲に含まれない。

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五つの名前、誤読されやすい一つの出来事

LSTC(最先端半導体技術センター)、北海道大学、富士フイルム、GEヘルスケア・ジャパン、imecの共同提案が10月20日、NEDOに採択された。課題名には「2nm」とある。だが最初に断っておく——この事業の範囲に、半導体チップを作る工程は含まれていない。作るのはAIシステムと、モデルを推論チップへ載せる最適化と、病院での検証だ。チップを誰が設計し、誰が作るかは、今日の時点では決まっていない。

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なぜ病院なのか

病院ではGPUが三つの壁にぶつかる。

  • 入らない:高性能GPUの消費電力は300〜700W(説明会の口径)で、発熱と大きさのために医療機器へ内蔵しにくい。
  • 出せない:患者のデータを院外のクラウドへ送ることは、帯域と遅延と規制の面で扱いにくい。
  • 動かない:現行のGPUは、4Kの手術映像に複数のAIを並行して走らせると毎秒1〜2フレームまで落ちる。

病院に足りないのは計算の頂点ではない。現場に入れる計算だ。

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三つのシステム、三組の数字

三つのシステム:現在 vs 目標
CT画像の再構成現在 毎秒5スライス → 目標 毎秒25スライス ↑臓器セグメンテーション(約1,000クラス)現在 約25秒 → 目標 5秒以内 ↓(短いほど良い)4K手術映像のAI解析現在 毎秒1〜2フレーム → 目標 毎秒30フレーム ↑

いずれも採択時の目標であり、実測ではない。↑高いほど良く、↓低いほど良い。灰色の点=現在、実心の点=目標。各行の縮尺は独立している(単位が異なるため)。全体の目標も同様に未実測で、画像処理速度5倍以上、エネルギー効率10倍以上(現行の医療機器に搭載される市販GPU比)。超音波とCT/MRIの重ね合わせは毎秒15フレームが目標。

これらの数字は採択の説明会で示されたものだ。成績として転述する報道は、読み違えている。

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宿題が先、チップは後

事業は2026年9月に始まる。学習とアルゴリズム開発はGPU環境で、推論はIBMのアクセラレータ「Spyre」で先行させる(Samsungが5nmで製造)。2029年3月がステージゲートだ——そこで出すのはチップではない。実測値に基づき、2nmへ移行すれば速度5倍、効率10倍を達成できるかを示す定量予測である。ゲートを通ってから、2nmの実機による検証へ移り、2031年9月に終わる。医療機器としての認証と上市は、その後になる。

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誰が作るかは、決まっていない

工藤與亮教授は日経に「最有力候補はラピダスだ」と語った。説明会の口径(TECH+)はもっと冷めている。LSTCは国産半導体の採用を希望し、Rapidusによる製造は「候補の一つ」。チップの設計はIBMを前提に想定するが、設計主体も製造先も確定していない。どちらの発言も事実であり、温度が違う。見るべき審査は一つ、2029年3月だ。

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このプロジェクトは、半導体を作らない。範囲は三つに限られる。AIモデル、そのモデルを推論チップへ載せる最適化、病院での有用性の検証——半導体デバイスそのものの開発は含まれていない。ステージゲートまでに投じる60億円超が買うのは、臨床の実測データで書かれた要求仕様と、2029年3月の審査だ。表題の2nmチップは、設計をIBMと想定し、製造先は未定。事業の最初の2年半、それは実物としては存在しない。

LSTCが主導する医療AIプロジェクトがNEDOに採択された。だが範囲に半導体開発は含まれない。ゲート前の60億円超で、Samsung製5nmチップの上に三つのAIシステムを作り、2029年3月に「2nmへ移せば達成できるか」の定量予測を出す。2nmチップの設計・製造主体は未定だ。

要点

  1. お金と規則が先だ。ゲート前の事業費は60億円超、事業期間は2026年9月から2031年9月。NEDOの本課題への応募は1件で、その1件が採択された。
  2. 目標は具体化された。CT再構成は毎秒5スライスから25スライスへ。約1,000クラスの臓器セグメンテーションは約25秒から5秒以内へ。超音波の重ね合わせは毎秒15フレーム。4K手術映像は毎秒1〜2フレームから30フレームへ。速度5倍、効率10倍と合わせ、いずれも目標であり実測ではない。
  3. チップは二重に未定だ。設計はIBMを想定し、製造先は決まっていない。工藤教授はRapidusを「最有力候補」とし(日経)、説明会の口径は「候補の一つ」にとどまる(TECH+)。出典の間で温度が違う。
  4. 時間の要は一つだけだ。2029年3月のステージゲート。通ってから2nmの実機に移る。医療機器としての認証は2031年9月の事業終了の後で、上市はさらにその後になる。

このプロジェクトは、半導体を作らない。範囲は三つに限られる。AIモデル、そのモデルを推論チップへ載せる最適化、病院での有用性の検証——半導体デバイスそのものの開発は含まれていない。ステージゲートまでに投じる60億円超が買うのは、臨床の実測データで書かれた要求仕様と、2029年3月の審査だ。表題の2nmチップは、設計をIBMと想定し、製造先は未定。事業の最初の2年半、それは実物としては存在しない。

CTのガントリーの中心に描かれた、光るチップ。三つのシステムのうち、最初の仕事場だ。
CTのガントリーの中心に描かれた、光るチップ。三つのシステムのうち、最初の仕事場だ。

病院で、GPUは三つの壁にぶつかった

まず問題を見る。CT、MRI、超音波、手術顕微鏡の画像は高解像度化し、データは膨らみ続けている。とりわけフォトンカウンティングCT——X線光子を一つずつ数え、そのエネルギーを測る次世代CTで、本事業の最初のシステムの対象だ。説明会の数字では、解像度は従来の約4倍になり得て、物質分別による情報が加わることでデータ量はさらに3〜5倍ほど増える。こうした処理の主役は本来GPUだが、高性能GPUの消費電力は300〜700Wだ。データセンターでは大したことではなくても、検査室に入り、手術台へ運ばれる機器にとって、発熱と体積と電源は硬い制約になる。

二つ目の壁は、データの居場所だ。患者の情報は機微であり、院外のクラウドで処理することは帯域、遅延、規制の面で扱いにくい。事業側の言い方は「送りにくい」であって「送れない」ではない。この区別は要る。三つ目の壁には具体的な形がある。診療の現場で使うのは、学習を終えたモデルによる推論——「これは何か」の判定であり、大規模な学習のために汎用GPUが備える機能のすべては要らない。要るのは、答えがすぐに出ることだ。現行のGPUは、4Kの手術映像に複数のAI処理を同時に走らせると、毎秒1〜2フレームまで処理速度が落ちる(説明会の口径)。

だから本事業の技術的な選択は、課題名の最初から書かれている。推論に特化することだ。汎用の計算の巨人ではなく、推論だけを速く、しかも機器の中に住めるほど冷たくこなすチップが要る。

三つのシステム、三つの部屋

リアルタイム画像診断支援(北海道大学+富士フイルム)。 フォトンカウンティングCTの高速再構成AIと臓器セグメンテーションAIを作る。再構成は毎秒5スライスから25スライスへ。全身の約1,000クラスの解剖学的構造の識別は、約25秒から5秒以内へ短縮し、放射線科医の読影とレポート作成を支援する。富士フイルムの狙いはAIにとどまらない。CT装置、PACS(医用画像システム)、読影端末への実装を見据えたシステム開発までが発表文にある。つまりチップは入場券であり、製品は装置全体のワークフローだ。

リアルタイム診療支援(北海道大学+GEヘルスケア・ジャパン)。 診療中に取得する超音波画像と、事前に撮影したCTまたはMRI画像をリアルタイムに重ね合わせ、呼吸による臓器の移動や変形を補正し続ける。目標は毎秒15フレーム。想定する場面は、肝腫瘍の熱焼灼と生検の穿刺だ(説明会)。

リアルタイム手術支援(北海道大学が主導し、imecが支援)。 北大が育ててきた脳神経外科の手術映像AIを基に、手術器具の追跡・認識、解剖学的構造の自動認識、出血のリアルタイム検出という三つの処理を統合し、手術室に置ける小型の「手術動画解析AI Box」を作る。4Kの高精細な画像を保ったまま、現行の毎秒1〜2フレームを30フレームへ。imecは、モデルの変換と量子化、推論チップのパイプラインへの統合を担う。

三つのシステムは、一つの土台を共有している。機器の内側(エッジ)でリアルタイムに動く推論基盤だ。

一つのチップ、三つの部屋。CT室と超音波室と手術室だ。
一つのチップ、三つの部屋。CT室と超音波室と手術室だ。

宿題が先、チップは後

本事業で最も見るべきは、その順序だ。第一段階、2029年3月のステージゲートまでは、AIモデルの学習とアルゴリズム開発をGPU環境で進め、推論はIBMのSpyreで動かす。SpyreはSamsungが5nmプロセスで製造するアクセラレータで、想定される2nmチップと開発環境・アーキテクチャの親和性が高いことが採用の理由とされる(説明会)。ゲートまでに提出する成果物は二つある。三つのシステムをSpyre上に実装し、動作検証と最適化を終えること。そして、実測値に基づき、2nmプロセス世代へ移行すれば画像処理速度5倍以上、エネルギー効率10倍以上を達成できる見通しを定量的に示すこと——定量予測だ。ゲートを通ってから、事業は2nmの実機による検証へ移り、北海道大学病院で臨床的な有用性を確かめ、2031年9月に終わる。

事業の時間軸(計画)
2026.9開始:GPUとSpyreで開発2029.3ステージゲート(要の節目)2029–312nm実機での検証2031.9事業終了2031年以降認証と上市

Rapidusの2nm量産目標(2027年下半期、ロイター)は事業の外の条件であり、事業の節目ではない。医療機器としての認証は事業の終了後に取得し、上市はその後になる。

つまり、少なくとも2年半の間、「2nmの医療AI」はSamsungが作った5nmのチップの上で動く。そして、その2nmチップを誰が作るのかについて、出典の温度ははっきり違う。

事実

日経(2026年10月20日):工藤與亮教授は記者会見で「最有力候補はラピダスだ」と述べた。TECH+(説明会の口径):LSTCは国産半導体の採用を希望しており、Rapidusによる製造は「候補の一つ」。2nmチップはIBMが設計することを前提に想定するが、設計主体も製造先も確定していない。ロイター(2026年10月20日):チップはIBMのライセンス技術でRapidusが生産することが想定される。三つの報道に共通するのは、どれも「決まった」とは言っていないことだ。

東哲郎理事長の発表会での発言は、この順序の狙いを示す。「半導体やAI、医療機器などの専門性を結集し、最先端半導体を実際の医療現場で役立つ技術へとつなげていく」(日経)。チップと応用を同時に開発することは、この事業の設計であって、事故ではない。

手術顕微鏡の下でのリアルタイム認識。目標は毎秒1〜2フレームを30フレームにすることだ。
手術顕微鏡の下でのリアルタイム認識。目標は毎秒1〜2フレームを30フレームにすることだ。

達成できるか:一つずつ判断する

最初に断っておく。以下はすべて本誌の編集判断であり、測定でも統計でもない。既知の事実を並べた上で、私たちが賭ける方向だ。「できるか」を分けると、答えは一つではない。

三つのAIシステムがゲートまでに(Spyre級のハードウェアで)形になること——大方できる。 実質的にはソフトウェアの工学だ。富士フイルムにはREiLIの実装経験があり、北大には臨床の現場と既存の手術映像AIがあり、ゲートまで2年半ある。この部分は2nmと無関係であり、だからこそ最も固い。

ゲートでの定量予測が通ること——可能だが、割り引いて聞く。 固定したタスクの推論専用チップが汎用GPUに対して効率10倍を出すこと自体は珍しくない。だが物差しは「現行の医療機器に搭載される市販GPU」であり、その物差しはGPUの進歩とともに動く。しかも「画像処理速度」は再構成まで含む一貫した指標で、チップ単体のベンチマークより難しい。どれほど堅い予測でも、予測は予測だ——ゲートはそれを審査するためにある。

ゲートの後、予定通りに2nmの実機へ移ること——五分五分で、危うい側。 事業の外にある三つのことが同時に成り立つ必要がある。IBMの設計が期限に間に合うこと、製造先(いまだ未定)が期限に納めること、北大病院での臨床検証が遅れないこと。二段階とステージゲートの設計は、まさにこの区間のリスクへの備えだ。ゲートまでに、制御できる部分をすべて終えておく。

認証と上市——事業の時計にはない。 2nmチップを搭載した医療機器としての認証は、2031年9月の事業終了の後に取得する必要があり、上市はその後になる(AIソフトウェアの認証対応は事業期間中に並行して進める)。2031年を「製品の発売年」と読む者は、読み違えている。

もう一つ、はっきり言っておく。医療用の推論チップは小量の市場であり、本事業はどの工場の腹も満たさない。生まれるのは仕様と手法と、臨床データのパイプラインだ。

判断

見方

本事業が届けるのはチップではなく、一つの順序だ。まず病院が、他社のチップの上で自らの要求を実測データに変える。次に、そのデータが、まだ存在しない2nmチップを定義する。60億円超が買うのは、この仕様と2029年3月の審査である。この順序を支える物理は一条だけだ。GPUが機器の内側へ入れないのは計算が足りないからではない。300〜700Wでは熱すぎ、大きすぎるからだ——勝負は計算の頂点ではなくワット数で決まる。病院は最初の部屋にすぎない。モデルを推論チップへ載せる手法は、TECH+によれば製造やロボティクスなど他のエッジ領域への展開も想定されている。リスクも同じページに書かれている。2029年3月の定量予測がゲートを通らなければ、あるいはゲートの後も設計と製造が決まらなければ、「応用が先」は「応用の空転」になる。Spyreの上でどれほど仕上げても、国産2nmの証明にはならない。2029年3月に審査を見て、2031年9月に実機を見る。この二つの日付が、本稿の賞味期限だ。

LSTC(全体統括)

2022年12月に設立された技術研究組合。理事長は東哲郎氏で、Rapidusの会長を兼ねる。組合員にはRapidus、ソフトバンク、富士通、ソニーセミコンダクタソリューションズのほか、産業技術総合研究所や理化学研究所がいる。本事業での役目は統括と接続だ。半導体とAIと医療機器と臨床現場を一つのテーブルに着かせる。この事業の範囲では、誰もチップを作らない。

北海道大学(AIと臨床)

全実施項目にわたり、医用画像AIの設計・評価・臨床適合性を担い、三つのシステムすべてに関わる。北海道大学病院で有用性の検証も行う。研究開発副統括責任者は大学院医学研究院の工藤與亮教授。

富士フイルム・GEヘルスケア・imec(再委託)

三者はいずれも再委託先だ。富士フイルムは北大とCTのシステムを、GEヘルスケア・ジャパンは北大と超音波の重ね合わせを担当し、手術のシステムは北大が主導する。imecの仕事はチップの設計ではない。手術動画のAIモデルを変換し、量子化し、推論パイプラインへ統合して、推論特化型の半導体へ実装する。その最適化の手法は、他の二つのシステムへも展開される計画だ。

IBM(先行ハードウェアと、想定される設計者)

ゲートまでの間、システムはIBMのAIアクセラレータ「Spyre」の上で動く(Samsungが5nmプロセスで製造。想定される2nmチップと開発環境・アーキテクチャの親和性が高いことが採用理由とされる)。ゲート後に想定される2nm推論チップは、IBMが設計することを前提とする——ただし設計主体も製造先も、正式には確定していない。

NEDO(お金と規則)

「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」の課題(d7)。プロジェクトコードはP20017。応募は1件で、その1件が採択された。事業期間は2026年9月から2031年9月。ステージゲート前の事業費は60億円超(説明会の口径)だ。

それぞれが欲しいもの

事業が採択される理由は、技術の成立だけではない。各社の動機を並べると、この事業の形が見える。

国(経済産業省とNEDO)が欲しいのは「用途」であり、それを隠さない。 日本の半導体政策は、第一歩が生産能力、第二歩が工場だった。第三歩は「作って、誰が使うのか」に答えなければならない。発表文は目的を率直に書く。我が国で生産される最先端半導体の社会実装ユースケースを創出することだ。同じ週、同じ事業で、PFNと米Tenstorrentの光電融合xPUの課題も採択された。一つの孤立した事業ではなく、国産チップに仕事を探す組み合わせである。そして発表の前日(10月19日)、経済産業省はRapidusに対し2027〜29年度に計4,000億円の産業投資を求める計画を示したばかりだった(要求の段階にあり、各年度の承認が前提。全額が実現すれば政府の累計出資は6,500億円となり、2兆円の民間融資は意向書の段階にある)。工場には需要の物語が要る。出資の説明が立つためだ。

LSTCと東哲郎氏が欲しいのは「接続」であり、成果物は仕様だ。 同じ人物がRapidusの会長とLSTCの理事長を兼ねる。一方には将来チップを作る工場があり、他方には需要を組織する研究組合がある。偶然ではなく制度の設計だ。東氏も説明会で同じ趣旨を述べた。最先端半導体とその応用は、同時に開発しなければならない。本事業におけるLSTCの製品はチップではない。臨床の要求をチップの仕様へ翻訳するテーブルと、ゲートまでに積み上がる実測データだ。

富士フイルムが欲しいのは、差別化の乗り物だ。 2019年12月に日立の画像診断関連事業を約1,790億円で買収すると発表し、2021年3月に完了させ、CT、MRI、超音波の製品群と販路を手に入れた。だが画像のハードウェアは同質化が進み、利益はソフトウェアとワークフローに寄る。同社の医療AI基盤「REiLI」は、自社の装置に載る理由を要する。発表文は狙いを明記する。CT装置、PACS、読影端末への実装を見据えたシステム開発であり、次世代の装置の再構成AIは、すでに自らの課題表にある。

GEヘルスケアが欲しいのは、超音波の本拠を守ることだ。 超音波とCT/MRIの融合画像は、各社が奪い合う臨床機能である。同社は日本に開発・製造・販売の体制を持つ(本社は日野市)。本事業で担うのは、まさにその融合画像のシステムだ。

北海道大学と北海道が欲しいのは、実証の場と地域医療だ。 発表文は地域医療の診断高度化を目的の一つに挙げる。そして北海道はRapidus千歳工場の所在地でもある。半導体と医療が、同じ道内で互いを裏書きする。

imecが担うのは、手法そのものだ。 本事業での分担は具体的に書かれている。手術動画のAIモデルを変換し、量子化し、推論パイプラインへ統合して推論特化型の半導体へ実装すること。その最適化の手法は他の二つのシステムへも展開される(TECH+)。これはimecの本業だ。発表文に付されたimecの紹介は、IC-Linkを通じて概念から量産までのカスタム半導体ソリューションを提供すると記す。

IBMは両端にいる。 ゲートまではSpyreが先行ハードウェアであり、ゲート後の2nmチップはIBMの設計が前提と想定される。製造が最終的にどこへ落ちても、IBMのアーキテクチャとツールチェーンは、先に仕様の中へ書き込まれる。

出典・参考資料

  1. LSTCなど5者の共同発表(2026年10月20日):NEDO採択、三つのシステム、二段階の進め方、速度5倍・効率10倍の目標、役割分担、LSTCの概要 — https://www.lstc.jp/assets/pdf/5社連名_d7_press_20261019.pdf
  2. NEDOの公募結果ページ(2026年10月20日):課題区分(d7)、応募1件の採択、事業期間は原則5年以内、プロジェクトコードP20017 — https://www.nedo.go.jp/koubo/IT3_100373.html
  3. TECH+(マイナビ、2026年10月20日)説明会の報道:事業期間2026年9月〜2031年9月、2029年3月のステージゲートと定量予測の提出物、ゲート前の事業費60億円超、SpyreはSamsungが5nmで製造、四つのシステム目標(CT毎秒25スライス、セグメンテーション5秒以内、重ね合わせ毎秒15フレーム、手術毎秒30フレーム)、imecの役割、半導体デバイス開発を含まない事業範囲、医療機器の認証は事業終了後、Rapidusは「候補の一つ」 — https://news.mynavi.jp/techplus/article/20261020-5162711/
  4. 日本経済新聞(2026年10月20日):工藤教授の「最有力候補はラピダス」、東哲郎理事長の発言 — https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC204I80Q6A021C2000000/
  5. ロイター(2026年10月20日):チップはIBMのライセンスでRapidusが生産する想定、Rapidusの量産目標は2027年下半期 — https://www.reuters.com/jp/economy/LYCWCTK2XBOAZG3EQDJ65W2UVE-2026-10-20/
  6. EE Times Japan(2026年10月20日):経済産業省が10月19日に示したRapidusへの産業投資4,000億円の計画(2027〜29年度、要求の段階)、政府の累計出資6,500億円、民間融資2兆円は意向書の段階 — https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2610/20/news052.html
  7. PFNとTenstorrentの共同発表(2026年10月21日):同じNEDO事業で光電融合xPUの課題が採択 — MENAFN転載の共同発表
  8. 富士フイルムホールディングスの発表(2019年12月18日):日立の画像診断関連事業を約1,790億円で買収。同買収は2021年3月に完了 — TDnetの発表PDF
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